ベトナム人女将さんの「小鳥の助け方」が心に染みた件@ホイアン

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プール脇で小鳥が動けなくなっている。

手のひらに乗ってしまうほど、体の小さな野生の鳥。

ここは世界遺産の都市ホイアンの外れのリゾートホテル "RUBY HOTEL HOI AN" です。

中華風のメインエントランスをぐるりと囲むように、洋風の白い客室棟が配置されています。

ホテルの奥にはプールが設けられており、美しい南国の花をながめながら、いくぶんかこの地の暑さを忘れさせてくれます。

そんなプールサイドでのこと。

プールサイドで小鳥が動けなくなっている様子を見て、なんだか切なさが込み上げて来ました。

けれど、このままにしてあげるのがいいのか、何か処置をほどこせばいいのかもわかりません。

するとホテルのおかみさんが通りがかかりました。


彼女は僕の様子に気がつくと、そっとこちらに歩いて来ました。

「あらあら〜。」

40歳近いベトナム人女性の彼女は、特におどろく様子も見せずに僕に話しかけます。

「かわいそうな小鳥ね。けどね、実はよくあることなの」

だびたび起こることなんだと語る彼女は、なぜここで小鳥が動けなくなっているのかを教えてくれました。

「あわれな鳥たちはね、ホテル棟の外のかべにぶつかってしまうのよ」

「このホテルは全体が白っぽいでしょ?たぶん小鳥たちはかべと認識できないまま激突しちゃうの。」

「で、問題は激突した後なのよ。」

「なんといってもこの暑さ。日中は軽く30度前後になってしまうんだから、小鳥たちは脱水症状を起こしちゃうの。」

「だからね、いまからこの仔を助けてあげないとね。」

おかみさんはそう言うと、小鳥を手のひらでそっとすくってみせた。

するといったん手を止めて、ふたたび僕に話しかけるのだった。

「あなたにとってはなかなか見ないシーンだろうから、写真でも撮ったらどう?」

僕はiPhoneを取り出してシャッターを切る。

ちょっとした違和感。

なにやら小鳥の助け方よりもずっと珍しいものをiPhoneの中に保存しようとしているような、そんな何か。

「さてさて、この仔に必要なのは水分よ。」

「見てなさい。このプールの水でもかまわないから、とにかく水を与えてあげるの」

「ほらみて、すごい勢いで飲むでしょ?のどがかわいてしょうがなかったのよね。」

「こうして水をあげて、そっとしておいてあげると、小一時間もすれば元気になるわ。」

「きっとあなたが気がつかないうちに空に帰るわよ」

小鳥に水を飲ませてあげるとは、なんてことでしょう。

「さあ、あなたも手伝っておやり」

なぜかこの大仕事を僕にふってくる陽気なおかみさん。

僕も自分の手で小鳥の水飲みをサポートしてあげるのでした。

手のひらのなかではほとんど身動きをとらない小鳥でしたが、指先から水を垂らしてあげるとくちばしを開閉させ、小さなからだに水分をたくわえていきます。

生きている。いや、生き返った。

するとベトナム人のおかみさんがまた一言。

「ひとつだけ。アリには要注意よ。弱ってる鳥を見つければ、すぐに悪さしちゃうんだから。」

「だから、そっとしておくにしても、土がむきだしになってる地面に置いちゃいけないのよ」

おかみさんはそういうと、プールサイドの脇の鉢のふちに、そっと小鳥を乗せてあげるのでした。

小鳥はどうなるのだろう。

最初はどうも不安でした。

ベトナム人のおかみさんに「弱ってる小鳥がいる」なんて報告したら、ただその場で小鳥を始末しちゃうのかなと。

しかし、あのベトナム人のおかみさんのやさしい扱い方を見ると、どうも様々考えさせられます。

一羽の小鳥すら助けられずうろたえる僕と、慣れたもんだと介抱してしまうおかみさん。

生き物との距離感がまったくちがう。

それから数時間後、もう一度プールサイドに訪れてみると、さきほどの小鳥の姿はもうありません。

ベトナム人の女性の手によってふたたび空へとかえっていったのでしょう。

その一件以降、ホテル滞在中に彼女と何度かすれ違いました。

そのたびに向けられる笑顔は、よそ向けのそれかなとは思いつつも、小鳥を介抱していたときと同じようなやわらかな表情を浮かべています。

お昼過ぎ、彼女は仕事の手が空くと2歳になろうかという自分の娘とたわれむていました。

そのときに浮かべる母としての姿も、やはり印象は変わらない。

彼女の際だった個性と言われれば、何も言い返しはできません。

ここは日本じゃないから、南国の国だから、世界遺産の街だから、ベトナム人だから?

そういったポイントではとても説明がつかない何かを見せつけられた気がします。

彼女を通して眺めたベトナムは、やっぱり「豊かだなあ」と思うのです。

あの人なら、僕がホイアンで倒れていてもきっと水を与えてくれたでしょう。

ベトナムがもっと好きになった瞬間でした。

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